さよなら!僕らのソニー

書籍イメージ
立石泰則 著  出版社 文春新書
2011年11月20日 初版
ISBN978–4–16–660832–4

 僕らの年代はかつてソニー製品は憧れのオーディオビジュアル機器だった。
 フルコンポのオーディオ機器などもあったが僕がまだ社会人、成りたての当時はミニコンポが主流になりつつありユニークな機能のついたミニコンポをオーディオメーカーは各社、販売していた。
 一番欲しかったのはソニーのカセットデッキが2台ひとつの筐体に取り付けられているいわゆるダブルデッキだった。
 2台のカセットデッキが連動する事により倍速ダビングが可能で自分のお気に入りのテープを作るのが当時、流行した。

 本書にも書かれているウォークマンもすごく欲しかった。
 ウォークマンが発売されたときはまだ学生だったため学校を卒業して働いて初めてウォークマンを自分で買って手に入れた。
 ビデオデッキもベータSONYを買った。
 あとでVHSに負けるとは思わなかった。

 そんな風にソニーの製品は僕らの憧れとして常にあった。

 プレイステーションが出た時はソニーの凄さを感じた、鉄拳がやりたくて買った。
 その後であれ程ゲーム機で天下を取っていた任天堂がプレイステーション負けるとは信じられなかった。

 その後、ビデオデッキが段々とデジタルに移行して行った時にソニーのクリップオンというハードディスクレコーダーの存在を知った。
 一部のマニアの間ではこのクリップオンでテレビを視聴するのがすごく便利で快適、ライフスタイルが変わるとの口コミが広がっていた。
 そして、かなりの値段をしたががクリップオンを購入した。
 それは、テレビ視聴のライフスタイルを完全に変える機器に間違いなかった。
 それまで録画はビデオデッキで録画日と録画時間のからまでを録画したい番組ひとつひとつに設定しなければいけなかった。
 更に1日最大6時間分までしか1台のデッキでの留守録ができなかった(1本のビデオテープの最大録画時間の為)。
 なので、大量に録画する人はビデオデッキを何台も保有していた。
 それが、クリップオンではハードディスクに入る限界まで録画予約ができ、EPG(電子番組表)で番組のタイトルを選択する だけで録画予約が出来るという便利さ(今は当たり前だが)だった。
 視聴するときも、その見たいタイトルを選択するだけで視聴できるのだ。
 ビデオテープだったらどのテープに何が入ってるかすぐわからなくなった、録画タイトルをテープに記入するのも面倒な作業だった。
 一回しか視聴しないのに。
 その後、あまりの便利さに僕は後継機2機種(コクーン)も買う程この録画機が好きだった。

 だが、ハードディスクレコーダーのみのレコーダーは世間的には受け入れられず、後継2機種を出してDVD付きのレコーダーになった。

 そう言ったソニーらしい製品が当たる時もあれば外れる時もある。

 現在のソニーはな新しいライフスタイルを提案したり、圧倒的な技術で他社の追随を許さないハイクオリティな製品を出す会社ではなくなってしまった。

 この本はそうしたソニーの大躍進の時代から衰退していくの過程が様々なエピソードと共に書かれている。

 第1章  僕らのソニー
 著者の過去の体験の追想録で、初めてのソニー製品を購入するエピソードが語られる。
 オープンテープレコーダーを初めて買ったのがSONY製品で、その後ソニーのラジカセをいかに購入したかが語られる。

 そして、アメリカでいかに苦労してソニーがメジャーな企業になっていったのかといったことが語られていく。

 第2章  ソニー神話の崩壊
 この後、「トリニトロン」や「ウォークマン」の製品からソニーが絶対的な地位を築くことが語られる。
 だが、そうした中ソニーらしい製品の発売がほとんどなくなっていき、他社との低価格競争になっていった。
 しかし、ソニーはそれを巻き返しハイビジョンカメラや平面ブラウン管の開発、発売で復活をした。
 そして、薄型テレビの開発の遅れのために薄型テレビの販売競争には苦戦するのだった。

 第3章  「ソニーらしい」商品
 ここではいかにソニーらしい商品が開発されるのかが語られる。
 トリニトロン・カラーテレビ、ウォークマン、CDプレイヤー8ミリビデオなどのヒット商品が開発される中、1995年に経営者が変わり新たな展開が始まろうとしていた。

 第4章  「技術のソニー」とテレビの周落
 薄型テレビの開発が後手になってしまった為赤字となってしまい、エレキ事業を復活するに至る経過が語られる。
 そして外国人CEOが選任される事になり次々と研究所や工場が閉鎖や売却されていく。

 第5章  ホワッツ・ソニー
 ここではいかに経営陣が変わっていったかが語られ、技術のソニーからソフトコンテンツのソニーへと舵を切っていく様子が語られる。

 第6章  黒船来襲
 そして経営陣がの遍歴の続きが語られ、ついに外国人CEOストリンガーになった事情が描かれていく。

 第7章  ストリンガー独裁
 ストリンガーは研究や開発施設、工場等を大胆に閉鎖や売却を行いリストラを敢行する。
 バッテリー発火問題、個人情報流出騒動など劣化していくソニー。
 苦境に立たされたソニーの状況が語られていく。

 最終章  さよなら!僕らのソニー
 2011年初代社長・大賀典雄の葬儀の模様と既に日本の企業ではなくなったソニーと著者は語る。

 ソニーの復活はあるのか。

 PS5の噂が立つ今、新しい展開はあるのか。

 現在のCEOは日本人である。


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